老人と無線操縦無人機

By 06/06/2015 September 23rd, 2015 挿話
Drone

エトナ山での葡萄収穫期間に無線操縦無人機を盗もうとした年老いた農夫

10月最後の土曜日、エトナ山では、そしてシシリアにおいて、おそらくこの年の最後になるだろう葡萄収穫が行われている。通り道で見る葡萄畑では、ネレッロマスカレーゼ、ネレッロカプッチョ、カリカンテ、全てがもう収穫されてしまって、エトナのワインは葡萄酒醸造所で生まれようとしている。唯一、海抜1,100メートル以上にある、常軌を逸した葡萄畑のみが収穫をここまで遅い時期に至らしめることができる。

イタリアの他の大部分においては、とても難しい収穫年であった一方、エトナでは、就中白葡萄にとっては、とても良い収穫の年であった。先週のアフリカからの蒸し暑さが一過し、今日は寒い日である。明け方、ソニャとナヴェ地区に向かう。そこには僕たちのすばらしい葡萄、甘く、赤みがかった黄金色の、無傷のグレカニコドラトとアルバネッロの葡萄の房がある。

これより前に、僕たちは、手仕事による収穫がいかにほねの折れる仕事かを証するためにビデオ撮影することを決めていた。手仕事による収穫は僕たちにとっては、当たり前のことで、僕たちの葡萄を収穫する機械を想像することなどできはしない。しかし、世界をめぐる幾人かのワイン愛好家と話していると、手仕事による収穫は、正真正銘の贅沢と考えられるべきだということが、たちまちわかってくる。

だから、上空から収穫活動を撮影するため、小さな無線操縦無人機を入手した。実際、上空からのみ、全体像を与えることができ、行われていることのイメージがより効果的になる。ソニャが思わず口にした、もっともな問いはこうだった。「でも、あなた、無線操縦無人機を操作したことあるの。」僕は、同様に自然に答える。「ううん、でもこれまで人生でもっとややこしいことをたくさんしてきているから。」本当のところ、空け放れた平原だから、誰にも危害を与えることはないだろうということが、僕を安心させていた。最初の離陸で、飛行機は思いもよらぬ速度で空に向かって発進した。僕は、地上30−40メートルあたりのところでそれを制御することに成功したが、それから飛行機はヒステリックに北の方に向かい、僕たちの視界から全く消えてしまった。パニックに陥った僕は、リモートコントロールをソニャに渡した。ソニャは、羨むべき冷静さで、飛行機を呼び戻すことに成功した。2度目の離陸では、無線操縦無人機を慎重さでもって、コントロール下におくことに成功したのだが、ある時点で、小さな飛行機は狂ったように動き出し、遠くに飛んで行き幾百メートルも離れたところに墜落してしまった。

スクリーンからの最後の撮影は、エトナの田舎の家と栗の木を映していた。僕たちは、無線操縦無人機が消えた方向でそれを探し始めた。

1時間あまり無意味にあちこち放浪していたとき、一人の年取った、土地の農夫があまり離れていないところで耕しているのに僕は気がつく。『墜落していく無線操縦無人機』を見たかどうかをどうやって聞いたものかと考えながら、僕は農夫の土地に近づいていく。シシリアの強い方言で、近くに小さなヘリコプターが落ちるのを見たかと老人に聞く。典型的な「ンズ!」、つまり舌を口蓋につけ息を吸い込みながら出される無愛想な音でもって否定される。ほぼ舌打ちのような音で、シシリア方言では「いいや、全く」を意味する。僕は迫る。「本当ですか。テレビカメラであなたの家の屋根とあの木を見たんですけどね。」農夫は言う。「いや、どれぐらいの大きさだったんかね。」「大体このぐらい。」と僕は手で大きさを示す。「あぁ、さっき通るのを見たけど、ここからは遠かったね。」というあやふやな返事を農夫はする。僕は、終始一貫していないのに気付き、「すみませんが、入らしてもらえますか。ひょっとしたらここに落ちたかもしれないから。」と頼む。年老いた農夫は僕の決心の堅さを知り、門を開けにくる。シシリア方言で「お入りなさい。善い若者に見えるお前さんに失礼なことをするのは良くないと思うからね」と言って、僕を招き入れる。そして、僕に家まで付いてくるよう合図する。テラコッタの屋根の、 溶岩石で作られた古い住居である。僕は入り、あたりを見回す。麻の袋の下、よく隠されたところに、無線操縦無人機はあった。年取った農夫はバッテリーを外してから、うまく隠したのだ。僕は無線操縦無人機を手に取り、内心では、農夫が僕を欺こうとしたので少しイライラしていたが、自分の所有物を再び見つけて嬉しかったし、老人も盗もうとしたことを後悔していたので、お礼を言う。

その後、僕たちは何回か離陸を実行した。みなさんは、その時の撮影がここで見ることができます。あの日は、すばらしい収穫とまぁまぁな撮影で一日が閉じた。けれど、解けない問いが残っている:あの老人は無線操縦無人機で何をするつもりだったのか。

Vendemmia Etna

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