グレカニコ・ドラート

グレカニコ・ドラート、謎めいた古い品種

グレカニコ・ドラートは、古い品種で、その起源と地理的伝播は魅力的な謎のベールに包まれています。数年前まではギリシャが起源だという説が有力でした。ギリシャ人は紀元前7世紀から既に様々な種類の葡萄品種をシチリアに持ち込んでおり、グレカニコ・ドラートもその一つだと考えられてきました。実際、その特有の名前から明らかであることに加え、ギリシャ人によるシチリアへの品種の導入は、ギリシャ人の農業集落として知られていた幾つかの地域に伝播していることからも立証されていました。

例えば、私達の愛するナーヴェ地域からそれほど遠くはないランダッツォ地域は紀元前5世紀にアルカンタラ川を遡って逃れてきたギリシャ人が農植民地を築いた場所です。この入植地の痕跡は無数の考古学的出土品の中にはっきりと残されており、その幾つかはランダッツォのヴァリアシンディ博物館に保存されています。キケロ自身がランダッツォ近辺のこれらの入植地について言及しており、そこの住民達について「農業に完全に従事する慎ましく偉大な労働者達」と描写しています。グレカニコ・ドラトート種の痕跡は、ルネサンス後期から既に見られ、植物学者クパニ(1657-1710)がグレカニという名で言及しています。1835年にはジェレミアという名の神父がグレカニコ・ドラートの特徴と、ランダッツォとトラパニにおける伝播について詳しく記述しています。

グレカニコ・ドラート種の葡萄分類学的研究

知識と共に無知であることの自覚が芽生える(「知れば知るほど、知らないことを知る」)実際、幾つかの葡萄分類学研究(カロ他、2000年)によって グレカニコ・ドラートと、ヴェネト州の主要な品種で、有名なソアーヴェの原料であるガルガネガの深い類似性が明らかになり始めました。ガルガネガが13世紀から既にヴェネト州に存在したことは、農学者ピエトロ·デ・クレシェンツィの著書で立証されています。この2つの品種の際立った類似性は、地理的位置の違い、イタリア中部には存在せず、互いに離れた地であることを考慮しても、非常に興味深く、品種の起源、伝播、発展について様々な理論が生まれました。

主要品種から選別されたクローンの遺伝子分析が広く行われるようになり、アーディジェのサン・ミケーレ農学研究所で行われた研究を含む幾つかの研究によって、グレカニコ・ドラートとガルガネガの遺伝子的同一性が証明され始めました。2003年、ある専門家チームが主要なヴェネト品種について詳しい遺伝子研究を行い、分析されたガルガネガ種の3つのクローンの内1つ(分枝系ISV-CV84)は分析されたグレカニコ・ドラートと完全に一致し、他の2つは僅かに異なっているという結論を出しました。

グレカニコ・ドラートの遺伝子類似

遺伝子類似はその後の研究でも証明され、これらの研究は、カタラット、グレコデルポッリノ、トレッビアーノトスカーノ、アルバーナ、エンピボッテ、マルバジア・ビアンカ・ディ・カンディアなどの、イタリア国内に散在する様々な品種同士の非常に興味深い幾つかの近縁関係も指摘しました。もう一つの魅力的な発見は、グレカニコ・ドラート種の遺伝子プロファイルは、スペインのカタルーニャ地方にかつて散在したものの、今では栽培されなくなり、もはやほぼ絶滅した品種、マルヴァシア・デ・マンレサ種の遺伝子プロファイルと同一ということです。つまり、グレカニコ・ドラートは研究者達にとって古い起源を持つ、地理的伝播が謎に包まれた、現在のところ説明不可能な品種なのです。

グレカニコ・ドラートが如何にして何世紀も前にシチリアのエトナ山腹に辿り着いたのか、ギリシャ人との関係の有無は、ギリシャ人は本当にシチリアにおける葡萄品種の伝播に一役買っていたのか、グレカニコ・ドラートが、ヴェネト州ではガルガネガの名で、カタロニアでは、マルヴァシア・デ・マンレサの名で大昔から存在しているのに、何故イタリア中部で見つかったことがないのか、新な遺伝子研究によって、これらの謎が解明される日がいつかやって来るかもしれません。私たちはこの品種についてより重要な研究を行っている研究所と連絡を取り始めました。私達の葡萄畑をグレカニコ・ドラートに関わる研究と探求のために提供する一方で、このテーマに関してまだ答えの見つかっていない疑問を明らかにする研究結果があれば、私達のウェヴサイトに掲載していくつもりです。また読者の皆様で、このテーマに関する重要な情報、または研究をお持ちの方は是非、私達にご連絡下さい。

グレカニコ ・ ドラート種の葡萄の木には植物的観点において明確な特徴があります 。この葡萄の木は樹勢が控えめで、発芽は4月後半と 遅く、開花は 6月後半、成熟は10月後半です 。私達の葡萄畑は標高が高いため、成熟が11月にずれ込むこともあります。

私達の葡萄畑におけるグレカニコ・ドラート

房は中くらいで、場合によっては25cmを越えることもあり、円柱型で岐肩が付いています(大抵2肩)。たまに見るからに粒がぎっしりつまった房もありますが、大抵、あまりつまっていません。液果は一定で、球形か楕円形です。果皮はバラ色がかった黄金色で、白粉は少なめで、しっかりしています。生産量は制限しなければ、かなりの豊作になるでしょう。しかし、私達の葡萄畑では、最高の品質を保証するために、葡萄の木1本当たり約1kgの生産量を維持しています。

最も頻繁に使用されている生育法はギュヨット式剪定による垣根仕立てです。葡萄畑の幾つかの区画では、グレカニコ・ドラートの木の適応と品質に与える影響を理解するために異なった剪定方式を試しています。この数年間、私達はこの品種が気候的逆境、旱魃、病気、寄生虫に対して抵抗力が非常に高いことを観察してきました。この特徴のおかげで、環境に負担をかける処置を避け、木と土地の性質を最大限に尊重することが出来ます。

グレカニコ・ドラートがベースのワイン

グレカニコ・ドラートから得られるワインは黄金色のトーンが際立つ強い藁色です。嗅覚的には、すぐにインパクトを与える香りで、フローラル、白い果実、りんご、西洋梨、パインアップル、トロピカルフルーツ、苦アーモンドの微かな香りが漂います。味覚はフレッシュでバランスが取れていて、温かく、あるいはかなり温かく、風味の高い、柔らかなコクが味わいを更に高めます。場合によってはその酸度のおかげで10年経ってもそのポテンシャルを発揮することが出来ます。グレカニコ・ドラートから得られたワインは、魚のホワイトソースをベースにしたパスタ、ボンゴレ(アサリ)のパスタ、カタネーセ風(イワシとウイキョウ)パスタ、エビの天ぷら、地中海魚の刺身、シチリア風アランチーネ(肉ラグーとほうれん草)、パルミジャーナ、揚肉団子に最適です。

一般的な特徴に加え、私達のグレカニコ・ドラート,は、火山鉱物の香りとナーヴェ地域に存在する強い温度差から生まれる香り高いニュアンスが豊富です。これは、エトナ山腹の限界高度にあるということ、また、腐植土と火成物質が豊かな土壌の1メートル以上の深さにまで根を張る台木のおかげです。まるでこの葡萄品種が置かれている極限の場所が、グレカニコ・ドラートの香りと味のパッケージを完成させているかのように、何世紀にも渡って放浪を続けた品種の真の性質と英雄的能力を見せつけています。エトナの年老いた農夫達の間では「昔の人がしていたなら、それには常に訳があったはずだ」という諺が広く親しまれています。それ故に彼らから学び、彼らのやり方を大きく変えず、尊重しながら発展させていく必要があるのです。もし、昔の人々がグレカニコ・ドラートをエトナの標高1100以上の山腹(当時は現在よりずっと英雄的な標高でした)に敢えて植樹したのなら、そこには訳があったのです。そして収穫時に葡萄の木の列の間を歩き、火山生来の肥沃の恩恵を受けた豊かで健康な葡萄を見ていると、その訳はおのずと理解出来るのです。